厚生労働省ホームページより

インフルエンザ Q&A
一般の方のために

●インフルエンザ総論

Q. 1: インフルエンザと普通のかぜは違うのですか?

 普通のかぜとインフルエンザを混同してはいませんか。普通のかぜの症状は、のどの痛み、鼻汁、くしゃみや咳(せき)などが中心で、全身症状はあまり見られません。発熱もインフルエンザほど高くなく、重症化することはほとんどありません。
 一方、インフルエンザの場合は38℃以上の発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛など全身の症状が強く、あわせて普通のかぜと同様の、のどの痛み、鼻汁などの症状も見られます。さらに、気管支炎、肺炎、小児では中耳炎、熱性けいれんなどを併発し、重症化することがあるのもインフルエンザの特徴です(医療従事者向けのQ1〜Q3を参照)。
 高齢者や、呼吸器や心臓などに慢性の病気を持つ人は重症化することが多いので、十分注意する必要があります。最悪の場合は死に至ることもあります。近年、小児がインフルエンザにかかると、まれに急性脳症を起こして死亡するといった問題も指摘されています(医療従事者向けのQ34を参照)。
 また、インフルエンザは基本的に流行性疾患で、我が国では例年11月〜4月に流行しますが、一旦流行が始まると、短期間に乳幼児から高齢者まで膨大な数の人を巻き込むという点や、インフルエンザが流行した年には、高齢者の冬季の死亡率が普段の年より高くなるという点からも、普通のかぜとは異なります(医療従事者向けのQ13を参照)。

インフルエンザによる死亡者数

Q. 2: インフルエンザにはどんな種類がありますか

 インフルエンザには原因となっているウイルスの抗原性の違いから、A型、B型、C型に大きく分類されます。A型はさらに、ウイルスの表面にある赤血球凝集素(HA)とノイラミニダーゼ(NA)という、2つの糖蛋白の抗原性の違いにより亜型に分類されます。いわゆるA/ソ連型、A/香港型というのは、この亜型のことです。歴史的にA型が大きな流行を起していますが、B型もヒトに感染し流行を起こします。C型もヒトに感染しますが、大きな流行は起こさないとされています。現在、ヒトの世界で広く流行しているのは、A/ソ連型ウイルス(H1N1亜型)、A/香港型ウイルス(H3N2亜型)、B型ウイルスの3種類ですが、症状や治療、予防法には大きな違いはありません(治療薬は型により異なることがありますので、医療従事者向けQ4〜Q5を参照してください)。インフルエンザの発症を防げるかどうかは、それぞれの人のからだがそれぞれのウイルスの種類に対して、防御のための抗体を持っているかどうかが鍵(かぎ)を握っています。
 また、このように抗原性の違う2種類のA型インフルエンザとB型インフルエンザのウイルスが、同じシーズンの中で複数流行することが多いので、A型インフルエンザにかかったあとB型インフルエンザにかかったりすることがおこります。

Q. 3:インフルエンザにかからないためにはどうすればよいのですか

 予防の基本は、流行前にワクチン接種を受けることで、これは欧米では一般的な方法になりつつあります。わが国でも年々わずかながらワクチンを受ける方の割合が増えてきています。また、インフルエンザにかかった場合に重症化する可能性の高い人は特に、ワクチンの接種は重症化防止の方法としても有効です。インフルエンザは、インフルエンザにかかった人の咳(せき)、くしゃみ、つばなどの飛沫と共に放出されたウイルスを、鼻腔や気管など気道に吸入することによって感染します(飛沫感染)。インフルエンザが流行してきたら、人混みは避けましょう。特に高齢者や慢性疾患を持っている人や、疲れていたり、睡眠不足の人は、人混みや繁華街への外出を控えましょう。
 空気が乾燥すると、咽頭粘膜の防御機能が低下して、インフルエンザにかかりやすくなります。外出時にはマスクを利用したり、室内では加湿器などを使って適度な湿度(50〜60%)を保ちましょう。常日ごろからバランスよく栄養をとることも大切です。帰宅時のうがい、手洗いは、かぜの予防と併せておすすめします。また、インフルエンザにかかって、咳(せき)などの症状のある方は特に、周りの方へうつさないために、マスクの着用が勧められます。
 なお、症状が出る前から抗インフルエンザウイルス薬を飲むことによる、インフルエンザの症状を予防する効果については、まだ国内での調査研究が十分に行われておらず、現在のところ推奨されていません。(医療従事者向けQ7参照)

Q. 4: インフルエンザにかかったらどうすればよいのですか

 どの病気でも共通して言えることですが、早めに治療し、体を休めることは、自分のからだを守るだけでなく、他の人にインフルエンザをうつさないという意味でも大変重要なことです。一般的には以下のような点に注意しましょう。
 ・ 単なるかぜだと軽く考えずに、早めに医療機関を受診して治療を受けましょう。
 ・ 安静にして、休養をとりましょう。特に睡眠を十分にとることが大切です。
 ・ 水分を十分に補給しましょう。お茶、ジュース、スープなど飲みたいもので結構です。

 最近、インフルエンザウイルス治療薬としての抗ウイルス薬も、医療機関で診察の上使用できるようになりました(医療従事者向けQ5参照)。また、インフルエンザにかかったことにより、他の細菌にも感染しやすくなりますが、このような細菌の感染による肺炎や気管支炎などの合併症に対する治療として、抗生剤(抗菌薬)が使用されます。これらの薬の効果については、インフルエンザの症状が出はじめてからの時間や、体の状態により異なります。それぞれの薬には、正しい飲み方、飲んでは行けない方、副作用などがありますので、医療機関できちんと説明を受けてください。また、使用する、しないは医師の判断となりますので、十分に医師に相談することが重要です。
 なお、いわゆる「かぜ薬」と言われるものは、発熱や鼻汁、鼻づまりなどの症状をやわらげることはできますが、インフルエンザウイルスや細菌に直接効くものではありません。

Q. 5:インフルエンザにかかったとき、解熱剤は使ってもよいのですか?

 解熱剤には多くの種類があります。その中で、インフルエンザに罹っているときには使用を避けなければならないものがあります。代表的なものが、アスピリンなどのサリチル酸解熱鎮痛薬、ジクロフェナクナトリウム、メフェナム酸です。別の人に処方された薬はもちろん、当人であっても別の受診時に処方されて使い残したものを使用することは避けるべきですし、市販の解熱鎮痛薬の一部にはアスピリンなどのサリチル酸系の解熱鎮痛成分を含んだものもありますので、自己判断せず、使用時にはかかりつけの医師によく相談してください。詳細は医療従事者向けQ6をご参照ください。

Q. 6: インフルエンザにかかったら学校や職場に行かない方がよいのですか

 一般的にインフルエンザウイルスに感染して、症状がでてから3〜5日間にウイルスを排出すると言われています。健康な成人では、インフルエンザは通常2〜3日で熱が下がりますので、熱が下がっても一両日はうつす可能性が残ることになります。この期間には他のひとへうつす可能性が高いので、人の多く集まるところは避けた方が良いでしょう。学校や職場に行く場合はマスクをするなど、周囲の人へうつさないように配慮してください。インフルエンザ薬の内服によってこの期間は、1〜2日間短縮されます。
 学校保健法では、「解熱した後2日を経過するまで」をインフルエンザによる出席停止期間としておりますが、「ただし、病状により学校医その他の医師において伝染のおそれがないと認めたときは、この限りではない」となっており、医師の裁量が認められております。また、職場復帰の目安については決まったものがありません。
 インフルエンザ罹患後には体力等の低下もありますので、以上のような点を考慮の上、いずれの場合も無理をせず、十分に体力が回復してから復帰するのがよいと考えられます。

Q. 7: インフルエンザにかかった人の部屋や衣類はどのようにしたらよいでしょうか

 インフルエンザにかかった人が部屋の中にいた場合、その人の咳やくしゃみ(飛沫)の中にインフルエンザウイルスがいる可能性がありますが、飛沫というのは1〜2メートル以上は飛びませんし、マスクをしていれば飛沫の発生は最小限に抑えることができます。また、手や指先を介した感染もありますので、手洗いは重要です。狭くて喚起の悪い部屋などでは、比較的長くウイルスが浮遊することもありますので、時々換気をすることや、部屋の湿度を適度に保つことなどが大切です。インフルエンザウイルスはほとんどの消毒薬に弱いので、目に見えるような、痰やくしゃみで飛んだ分泌物などによる汚れがある場合には、通常の消毒薬により消毒しておくほうがよいでしょう。しかし、十分な湿度があれば生存期間も短いので、通常の掃除だけで十分だと考えられます。
 インフルエンザにかかっている時に着用した衣服には、ウイルスが付着していることが予想されますが、これから感染を起こすことはまれだと考えられています。通常の洗濯をして日なたに干しておけばウイルスの感染性はなくなってしまいます。


●ワクチン接種

Q. 8:インフルエンザワクチンの接種は効果がありますか

 インフルエンザワクチンの接種を行うことで、インフルエンザによる重篤な合併症や死亡を予防し、健康被害を低く抑えることが期待できます。このワクチンの効果は、年齢、本人の体調、そのシーズンのインフルエンザの流行株とワクチンに含まれている株の合致状況に寄っても変わりますが、ワクチンの接種を受けないでインフルエンザにかかった65歳以上の健常な高齢者について、約45%の発病を阻止し、約80%の死亡を阻止する効果があったと報告されています。特に65歳以上の方や60歳から64歳で基礎疾患を有する方(気管支喘息等の呼吸器疾患、慢性心不全、先天性心疾患等の循環器疾患、糖尿病、腎不全、免疫不全症(免疫抑制剤による免疫低下も含む)など)では、インフルエンザが重症化しやすいので、かかりつけの医師とよく相談のうえ、接種を受けられることをお勧めします。
 WHOが推奨したウイルス株を基本にして、我が国の流行状況や流行前の健康な人が持っている免疫の状況などから予測して作られた我が国のインフルエンザワクチンは、この約10年間、予測したウイルスと流行したウイルスの株はほぼ一致しており、有効なワクチンが作られています。現在のインフルエンザワクチンには、A型2種類およびB型1種類が含まれており、A/ソ連(H1N1)、A/香港(H3N2)、B型のいずれの型にも効果があります。また、ワクチン接種による免疫の防御に有効なレベルの持続期間はおよそ5ヵ月となっていますので、毎年流行シーズンの前に接種することをお勧めします(医療従事者向けQ18〜Q20)。
 なお、当然のことですが、インフルエンザのワクチン接種ではSARSはもちろん、他のかぜウイルスによる「かぜ」(かぜ症候群)にも効果はありません。

Q. 9: インフルエンザのワクチンはいつごろ接種するのが効果的でしょうか

 インフルエンザに対するワクチンは、個人差はありますが、その効果が現れるまでに通常約2週間程度かかり、約5ヶ月間その効果が持続するとされています。多少地域差はありますが、我が国のインフルエンザの流行は12月下旬から3月上旬が中心になりますので、12月上旬までには接種をすまされることをお勧めします。
 2回接種の場合は、2回目は1回目から1〜4週間あけて接種しますので、1回目をさらに早めに接種しましょう。最も免疫を獲得する効果が高いのは、1回目の接種と2回目の接種間隔がおよそ4週間の場合とされていますが、体調不良などで1回目と2回目の期間が4週間以上あいたとしても、ワクチン接種の効果はありますので1回目からやり直す必要はありません。2回接種が必要な方は接種が可能になった時点で2回目の接種を受けておきましょう。また、逆に流行が始まっていて、2回接種を急いで行う必要がある場合には、不活化ワクチンですので、1週間以上あいていれば2回目の接種が可能です。
 インフルエンザの流行には地域性がありますので、全国的なインフルエンザの流行が始まっていても、地域によってはまだ流行していない場合もありますし、その逆に、全国に先駆けて流行する場合もあります。インフルエンザワクチンは接種してから免疫が出来るまでに約2週間かかることを考慮して、お住まいの地域で流行がピークになるまでに間に合うか間に合わないかを、地域の流行の状況をよく見て判断し、かかりつけの医師とご相談して接種をしてください。なお、インフルエンザは1シーズンに2種類以上の型が流行することがありますので、今流行している型には間に合わなくても、その後別の型が流行する場合はその型の予防を期待して接種をしておくのもよいと考えられます(医療従事者向けQ11,Q13,Q15を参照)。

Q. 10: インフルエンザワクチンの接種はどこでできますか

 任意接種の場合は、地域の医療機関、かかりつけ医などでインフルエンザワクチンを受けることが可能です。ただし医療機関によってワクチンの準備などのために、予約を必要とする場合もありますので、前もって接種を受ける医療機関に直接問い合わせて確認していただくようお願いします。
 任意接種以外では、予防接種法に基づく接種や、ワクチン接種の奨励事業など、各市町村(東京23区では区)で期間や費用の点でも異なることがあります。ワクチン接種可能な医療機関や地域での取り組みについては、それぞれの地域の保健所、医療機関、かかりつけ医などに問い合わせていただくようお願いします。

Q. 11: インフルエンザワクチンを接種した方がよいのはどのような人でしょうか

 通常インフルエンザに罹患した場合は、罹患したインフルエンザの型に対する免疫(抗体)ができ、半年から1年、あるいは1年以上続く場合もあると思われます。これに対して、ワクチン接種によって獲得した免疫は、持続期間がおよそ5ヵ月と短くなります(医療従事者向けQ18,Q20参照)。いずれの場合も、シーズンごとに免疫力を高めておく必要があるので、毎年シーズン前のワクチン接種が必要となります。
 重症化と死亡の報告が多い65歳以上の高齢者の方と、60歳から64歳で基礎疾患がある方(気管支喘息等の呼吸器疾患、慢性心不全、先天性心疾患等の循環器疾患、糖尿病、腎不全、免疫不全症(免疫抑制剤による免疫低下も含む)など)は、ワクチンの接種を受けておくことが勧められます。また、欧米では6ヵ月から24ヵ月未満の乳幼児も重症化しやすいことが報告されており、ワクチン接種による予防が望ましいと考えられています(医療従事者向けQ22参照)。
 また、これらの方と接する機会が多い方や就学児童も、「インフルエンザをうつさない」という観点から予防しておく方が望ましいと考えます。
 いずれの場合も、かかりつけの医師と相談のうえ、流行期に間に合うようワクチンを接種することをお勧めします。

Q. 12: インフルエンザのワクチン接種を受けることが適当でない人や受けるときに注意が必要な人はありますか
1)  ワクチン接種には不適当と考えられる方は予防接種法には以下のように示されています。

<予防接種実施規則第6条による接種不適当者(抜粋)>
(1)  明らかな発熱*を呈している者
(2)  重篤な急性疾患にかかっていることが明らかな者
(3)  当該疾病に係る予防接種の接種液の成分によってアナフィラキシーショックを呈したことが明らかな者
(4)  その他、予防接種を行うことが不適当な状態にある者
 *: 通常は、37.5℃を超える場合をいいます。

 また、既往などから、接種の判断を行うに際して注意を必要とする方(接種要注意者)がおられますが、この方々は接種禁忌者ではありません。ただし、医師と相談の上、健康状態及び体質を勘案して接種の可否を判断し、接種を受ける際には、改めて十分に効果や副反応などについて説明を受け、十分に理解した上で接種を受けるようにしましょう。

2)  インフルエンザワクチン接種の適応に関しては、年齢の下限はありませんが、通常生後6ヶ月未満の乳児にはワクチンを接種しません。

3)  インフルエンザワクチンは病原性をなくした不活化ワクチンと言う種類で、胎児に影響を与えるとは考えられていないため、妊婦は接種不適当者には含まれていません。しかし、妊婦又は妊娠している可能性の高い女性に対するインフルエンザワクチン接種に関しての、国内での調査成績がまだ十分に集積されていないので、現段階ではワクチンによって得られる利益が、不明の危険性を上回るという認識が得られた場合にワクチンを接種するとされています。また、妊娠初期はいろいろな理由で流産する可能性の高い時期なので、一般的に予防接種は避けた方がよいと考えられていますが、インフルエンザワクチンを接種しても胎児に異常の出る確率が高くなったというデータも無いことから、予防接種直後に妊娠が判明しても人工妊娠中絶をする必要はないと考えられています。主治医によく相談をして判断してください。

4)  熱性けいれんの既往がある方に対するワクチンの接種に関しては、予防接種ガイドライン(2003年発行:(財)予防接種リサーチセンター、監修 厚生労働省結核感染症課)に次のように記載されています。
「単純性熱性けいれんと診断がついた小児には、一般児と同様に接種する。ただし、発熱時の対応については、解熱剤、抗けいれん剤の使用等、事前に十分指導をしておく必要がある」

 つまり接種は可能ですが、けいれん発作でも、てんかんによる場合には取り扱いが変わってきますので、かかりつけの小児神経専門の医師とよく相談して接種を受けるかどうかを決めることが大切です。このようなお子さんにワクチンを接種する際には、流行が始まる前に接種をすませておかれることをお勧めいたします。

5)  てんかんの既往がある方に対しては、発熱で容易に痙攣重積発作を起こす場合もあるので、てんかんを治療している主治医あるいはその依頼に基づき、事例ごとに検討して、ワクチンを接種するか、しないかを決めるのが望ましいと考えられます。

Q. 13: 卵やゼラチンにアレルギーのある人もインフルエンザの予防接種ができますか

 卵アレルギーの程度にもよりますが、ほとんどの場合問題なく接種できます。ワクチンの製造過程に発育鶏卵を使うために、ごくわずかながら鶏卵由来成分が残って、それによるアレルギー症状がまれに起こることもありえます。しかし、近年は高度に精製されてワクチンにはほとんど残っていませんので、通常は卵アレルギーがあっても問題にはなりません。
 しかし、重篤な卵アレルギーのある方、例えば鶏卵を食べてひどい蕁麻疹(じんましん)や発疹を生じたり、口の中がしびれたりする方や、卵成分でアナフィラキシーショックを起こしたことがある方は、ワクチン接種を避けるか、インフルエンザにかかるリスクとワクチン接種に伴う副反応のリスクとを考慮して、接種前にかかりつけの医師とよく相談のうえ、十分に注意して接種することを勧めます。
 また、ワクチンに安定剤として含まれていたゼラチンに対するアレルギー反応(アナフィラキシーショック)が報告されていましたが、現在、インフルエンザワクチンを生産している4社からの製品にはいずれも、ゼラチンはふくまれていません。

Q. 14: 授乳中にインフルエンザワクチンを接種しても大丈夫ですか?

 授乳婦はインフルエンザワクチンを接種しても支障はありません。インフルエンザワクチンは不活化ワクチンというタイプで、ウイルスは病原性を無くしてありますので、体内で増えることもありませんし、母乳を通してお子さんに影響を与えることもありません。また、母親がワクチンを接種したことによって、乳児に直接のインフルエンザ感染の予防効果を期待することはできません(医療従事者向けQ25参照)。また同様に、ワクチン接種による精子への影響もありませんので、妊娠を希望しているカップルの男性の接種に問題はありません。
 授乳期間中にインフルエンザウイルスに感染した場合も、このウイルスは血液中に存在することは極めてまれで、存在した場合でも非常にわずかであると言われています。したがって、母乳中にインフルエンザウイルスが含まれ、母乳を介して乳児に感染を起こすことはほとんど無いと考えられます。
(参考)
 授乳をするときには、乳児との距離が非常に近くなるため、母親の咳(せき)やくしゃみの飛沫を、お子さんが大量に受けることになります。そのため、個人差はありますが、インフルエンザ発症後3〜5日間の大量にウイルスを排出すると言われている期間は、直接母乳を与えることは避けた方が良いでしょう。なお、抗インフルエンザ薬を使用した場合は、薬剤が母乳中に移行すると言われており投与中の授乳はできません(医療従事者向けQ5を参照)。

Q. 15: はしかや、水ぼうそうにかかっていたり、定期予防接種の時期と重なった場合にはどうすればよいですか?

 はしか(麻疹)や水ぼうそう(水痘)などに感染してしまった場合には、一般的には完全に治ってから4週間はインフルエンザのワクチンの接種をひかえた方がよいとされています。これらの疾患に罹患すると、免疫能が低下していることがあるため、ワクチン接種の効果を得るために期間をあける必要があります。
 小児の定期予防接種と日程が重なった場合は、基本的には定期の予防接種を優先しますが、地域でのその疾患の流行状況やインフルエンザの流行の状況からインフルエンザワクチンの接種を優先する場合もありますので、かかりつけの医師と十分ご相談のうえ判断して下さい。
 定期予防接種のうち生ワクチン(ポリオ、麻疹、風疹、BCG)であれば4週間以上、不活化ワクチンやトキソイドワクチン(DPT、DT、日本脳炎)であれば1週間以上間隔をおけば、インフルエンザワクチンは接種可能となります。
 またインフルエンザワクチンは不活化ワクチンですので、接種後は1週以上間隔をおけば他のワクチン(生ワクチン、不活化ワクチンとも)接種が可能となります。

Q. 16:インフルエンザのワクチン接種は何回受ければよいのでしょうか

 現在、日本で行われているインフルエンザのワクチン接種に使用するインフルエンザHAワクチンについては、平成12年7月から薬事法上の用法・用量が以下のようになりました。
年齢群 接種用量・方法 接種間隔・回数
13歳以上 0.5mlを皮下 1回又はおよそ1〜4週間の間隔をおいて2回接種
6歳〜13歳未満 0.3mlを皮下 およそ1〜4週間の間隔をおいて2回
1歳〜6歳未満 0.2mlを皮下 およそ1〜4週間の間隔をおいて2回
1歳未満 0.1mlを皮下 およそ1〜4週間の間隔をおいて2回

 また、65歳以上の高齢者に対しては1回の接種でも効果があり、2回接種による免疫の強化に関する効果についての評価は定まっていませんので、現在は1回接種が推奨されています。これは、厚生科学研究費による研究「インフルエンザワクチンの効果に関する研究(主任研究者:神谷 齊(ひとし)(国立療養所三重病院))」において、高齢者(65歳以上)に対するインフルエンザワクチン1回接種法による有効性の評価を行った結果、接種を行った後の抗体価の上昇は良好であり、重症化は十分に阻止する事が可能であったという報告に基づいています。また、これらの高齢者に接種した際の重篤な全身反応はなく、局所反応も軽微でした。
 なお、予防接種法により、「65歳以上の方」、「60歳から64歳までの方で、心臓、じん臓若しくは呼吸器の機能に障害があり、身の周りの生活を極度に制限される方、又はヒト免疫不全ウイルスによる免疫の機能に障害があり、日常生活がほとんど不可能な方」については、年1回、予防接種法による定期接種を受けることができ、万が一副反応が出て健康被害にあっても、その1回の接種については、予防接種法による救済制度が適用されます。詳しくは医療従事者向けQ&Aの「予防接種法関係」をご覧下さい。
 13歳以上64歳以下の方でも、近年確実にインフルエンザに罹患していたり、昨年インフルエンザの予防接種を受けている方は、1回接種でも追加免疫による十分な効果が得られると考えられます。2回接種をしたほうがより抗体価は上昇するという報告もあり、接種回数が1回か2回かの最終的判断は、被接種者の意志と接種する医師の判断によりますので、接種の際には最近インフルエンザにかかったことがあるかどうか、最近ワクチン接種を受けたことがあるかどうかとその時期、そして現在の体調などを担当医師に十分伝え、よく相談して下さい。

Q. 17: インフルエンザワクチンの接種による副反応にはどのようなものがありますか

 一般的に副反応は軽く、10〜20%でワクチンを接種した場所の発赤、腫れ、痛みなどをおこすことがありますが、2〜3日で消失します。全身性の反応としては、5〜10%で発熱、頭痛、さむけ、体のだるさなどがみられますが、やはり2〜3日で消失します。ワクチンに対するアレルギー反応として湿疹、じんましん、発赤とかゆみなどが数日見られることもまれにあります。
 インフルエンザワクチンは不活化ワクチンですので、ウイルスは化学的に処理され病原性はありませんから、その接種によってインフルエンザになることはありません。ワクチンの接種後に発熱した場合も、インフルエンザ以外の冬季に見られる呼吸器疾患にかかった可能性もあり、必ずしもワクチンの副作用とは限りません。
 卵アレルギーについてはQ13を参照してください。その他にギランバレー症候群(GBS)、急性脳症、急性散在性脳脊髄炎(ADEM)、けいれん、肝機能障害、喘息発作、紫斑などの報告がありますが、ワクチン接種との直接的関連については明らかになっていません。参考までに、米国ではこれまでにギランバレー症候群を発症したことがある人においてはインフルエンザワクチンを接種しない様に指導されています。
 極めてまれですが、死亡例の届け出もあります。これまでの我が国での統計では、インフルエンザワクチンによる可能性があると認定された死亡事故は約2,500万接種あたり1件です。

Q. 18: インフルエンザワクチンに水銀(チメロサール)が含まれているというのはほんとうですか

 日本を含め、世界で生産されているインフルエンザワクチンをはじめとした不活化ワクチンと言われるものには、1930年頃よりチメロサールと呼ばれる輸送・保存時の防腐剤が、容器内の細菌などによる汚染を防ぐ目的で含まれています。チメサロールはエチル水銀を含んでいますが、水俣病などの健康被害が報告されているメチル水銀とは異なり、神経組織を始めとした臓器に取り込まれる割合は低く、その半減期(体内に取り込まれた量が半分に減るのに要する期間)も短くて、1週間未満(メチル水銀は半減期約1ヵ月半)とされています。現在のところ、実際的な健康被害の報告も、ワクチンに含まれているような少量で、神経症状などを生じるといったような因果関係を証明する研究報告もありません。しかし、水銀剤であるということから、世界でも安全性に対する問題点が議論されており、WHOは当面はチメサロールを可能な限り減量し、将来的には代換えとなる保存剤を開発し、これを完全にとり除くことを各国に向けて勧告しています。わが国でも、減量の方向で努力が続けられており、現在市場に流通している製品には痕跡程度の量(0.008mg/ml〜0.1mg/ml)のチメロサールしか含まれていません。

Q. 19: インフルエンザワクチンで著しい健康被害が発生した場合は、どのように対応されるのですか

 予防接種法による定期接種の場合、予防接種と健康被害との間に関係があることが否定できないと認定されると、予防接種法による被害救済の対象となります。詳しくは医療従事者向けQ35をご参照ください。
 また、予防接種法の定期接種によらない任意接種によって健康被害が生じた場合は、医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構法による被害救済の対象となります。健康被害の内容、程度等に応じて、薬事・食品衛生審議会(副作用被害判定部会)での審議を経た後、医療費、医療手当、障害年金、遺族年金、遺族一時金などが支給されます。詳細な内容は、医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構(TEL:03-3506-9411)にご照会ください。

Q. 20: インフルエンザのワクチン接種の費用には健康保険が適用されますか

 予防接種については、健康保険が適用されませんので、原則的として全額自己負担となります。
 ただし、65歳以上の方及び60歳以上65歳未満の方で心臓やじん臓、呼吸器等に重い病気のある方などは、予防接種法による定期の予防接種の対象となりますので詳しくは医療従事者向けQ35,36,38をご参照ください(60歳以上65歳未満の方で、対象となるかどうかわからない場合は、市町村にお尋ね下さい)。市町村(東京23区の場合は区)により予防接種期間や、自己負担額が異なりますので、個別の情報については、それぞれのお住まいの市町村(東京23区の場合は区)へお問い合わせください。
 また、そのほかの方の接種は従来どおりの任意接種で、ご本人と医療機関との契約と言うこととなりますので、接種費用は全額自己負担となります。接種の費用は医療機関により異なりますので、接種を受ける予定の医療機関へ直接お問い合わせください(医療従事者向けQ32を参照)。


●インフルエンザに関連する諸問題

Q. 21: 今年流行するインフルエンザは何ですか

 最近は毎年、A/ソ連型とA/香港型の2種類のA型インフルエンザとB型インフルエンザの3種類の型のウイルスが、一緒に流行してきました。2002/2003シーズンは、A/香港型とビクトリア株系統のB型が11月終わり頃からほぼ同時に流行し始め、A型が1月の後半に、B型が1月末から3月にまで至る幅の広い流行のピークがみられました。
 インフルエンザは、ヒトの免疫のシステムを逃れて生きのびるために、抗原性の変異(医療従事者向けQ12参照)を繰り返すので、正確にどの株が流行するかを予測することはとても難しいとされていますが、患者分離株の分析と、南半球での流行状況も考慮して、2003/2004シーズンは昨シーズンと同じ種類の株が流行する可能性が高いと判断され、今年のワクチンには、A/ソ連型(H1N1)のニューカレドニア株、A/香港型(H3N2)のパナマ株(シドニー株に対応できる)、B型の山東株(ビクトリア株に対応できる)を混合したものが用意されました(医療従事者向けQ15,Q17,Q19参照)。
 全国の流行や検出の現状は、地域の感染症情報センター、保健所や国立感染症研究所のホームページで知ることができます。
 ○ 国立感染症研究所感染症情報センターホームページ:
http://idsc.nih.go.jp/index-j.html

 ○ 地方衛生研究所・保健所ホームページへのリンク:
http://idsc.nih.go.jp/others/phc.html

Q. 22: 新型インフルエンザが現れるとどうなるのでしょうか

 インフルエンザの流行の歴史をみると、かつてのスペインかぜ(A/H1N1亜型)が現れたときは、大規模な流行と甚大な数の死者を出しました。新型インフルエンザが流行した場合、これに対して免疫を持っている人はいませんし、また事前に接種された予防接種の効果は余り期待できないため、かなりの数の罹患者と死亡者がでることが予想されます。アメリカでは8〜20万人の死者が出ると予測されており、わが国では3〜4万人の死者が出ることが懸念されます。
 1997年に香港で発生した、新型インフルエンザ(A/H5N1亜型)ウイルスによる患者報告では、入院加療を受けた18症例中6例が肺炎の合併などにより死亡し、香港政府は1997年12月末、140万羽のニワトリを殺処分しました。このときは、ウイルスはヒトからヒトに感染したものではなく、恐らく感染しているニワトリからヒトに感染したものと考えられました(IASR Vol 18,No 9 http://idsc.nih.go.jp/iasr/18/211/dj2111.html)。しかし、2003年にも、中国南部へ旅行した家族の感染が報告されており、ヒトからヒトへの感染が疑われています(IASR Vol 24,No3 http://idsc.nih.go.jp/iasr/24/277/fr2771.html)。これ以外にも、2003年2月にはオランダで、やはりトリ型インフルエンザウイルス(A/H7N7)がヒトへ感染したことが報告され、家庭内でのヒトからヒトへの感染も確認されています(IASR Vol 24,No 6 http://idsc.nih.go.jp/iasr/24/280/fr2801.html)。
 これらのウイルスがこのまま姿を消してしまうのか、あるいは再び勢いを盛り返して流行するかはだれにも予測がつきませんし、どのようにしてトリのウイルスが直接ヒトへ感染を起こしたのかもわかっていませんので、監視の体制を強化していくことが必要です(医療従事者向けQ16参照)。
 厚生労働省では、現在、新型インフルエンザ対策に関する検討小委員会を開催して、対策を検討しています。
 なお、鳥インフルエンザに関しては、別に「鳥インフルエンザに関する情報」http://www.mhlw.go.jp/houdou/0111/h1112-1f.html を設けていますので、そちらを参照ください。

Q. 23: インフルエンザワクチンは国によって違うのでしょうか?

 インフルエンザワクチンに使うウイルスの株は、世界中のほとんどの国でWHOが2月中旬に出している「北半球次シーズンに対するワクチン推奨株」に基づいて、決めています。各国がそれぞれの国とその周囲の国の状況を総合的に判断してWHOの意見を参考に決定しているため、多少の違いはあっても、ワクチン株が国によってまったく異なるということはこれまでほとんどありませんでした。また、毎年のインフルエンザシーズンで、国ごとに主に流行するインフルエンザウイルスの型(A/ソ連型、A/香港型、B型)が異なることはありますが、主に流行した3つの型が、国ごとに大きく異なっていたこともほとんどありませんでした。つまり、たとえば日本で接種したワクチンも、中国で流行しているインフルエンザに効果がありますし、逆に中国で接種したワクチンも、日本で流行中のインフルエンザに対して効果があることになります。ただし、ワクチンの製造方法や添加物などは国によって若干の違いがあるため、接種によって得られる免疫力や副反応の頻度には差があります(医療従事者向けQ33参照)。

Q. 24: 今年のインフルエンザシーズンにSARS(重症急性呼吸器症候群)が再び流行するという噂は本当ですか

 結論から言えば、これは世界中のだれにもわかりません。再び発生すると危惧されている理由は幾つかあります。例えば、SARSコロナウイルスはもともと野生動物がもっていて、それがヒトに感染したと考えられるため、再び同様のことがおこらないとは限らないことや、既知のコロナウイルスはインフルエンザと同じ冬季に流行することが知られていることから、冬になると流行する可能性を否定できないこと、また、前回の世界的な集団発生が冬季に始まっていること、SARSコロナウイルスが低温に強いことが実験で示されていることなどがあげられています。(「SARS研究のコンセンサス」参照: http://www.who.int/csr/sars/en/WHOconsensus.pdf

Q. 25: SARSとインフルエンザはどう違うのですか

 SARSはSARSコロナウイルス、インフルエンザはインフルエンザウイルスによる感染症で、それぞれまったく違うウイルスによるものですが、初期の症状は、突然の高熱、筋肉痛、全身のだるさなど極めてよく似ており、症状だけからでは区別はつきません。また、インフルエンザは感染してから1〜3日で症状が出てきますが、SARSは感染してから発症するまで(潜伏期)に2〜10日かかります。同じような症状の人と接触した時期を思い出してください。インフルエンザは通常1週間前後で治りますが、SARSの場合には発熱が持続し、熱が出初めてから2週目頃から呼吸器症状が強くなり、10〜20%の人では人工呼吸器が必要なほど重症化します。しかしながら、インフルエンザであっても重症になれば肺炎を起こしますし、SARSも軽症であれば、1週間程度で治りますので、やはり単純に症状だけで区別することはできません。したがってSARSが疑われるときには、実際にSARS患者と濃厚な接触をしたか、介護したか、同居したか、あるいはその体液に接触したかなどの情報が重要となります。両者を見分けるためには、医療機関において各種検査を行いその結果などから総合的に判断することが必要です。(「SARS症例定義」参照: http://idsc.nih.go.jp/others/sars/update45-def.html
 また、インフルエンザは症状が出てすぐの時期に感染力が最も強いことが知られていますが、SARSは症状が出た翌週の肺炎期に最も感染力が強くなるとされていますので、経過をよく観察して、早めに医療機関を受診しましょう。

Q. 26: 今年の冬はSARSも考えて、いままでとは違った用心が必要ですか

 平成15年10月末現在では、世界にSARSの感染が確認されている地域はありませんので、神経質になる必要はありません。つまり、以前にSARSの感染が確認された地域から帰国しただけでは、SARSを積極的に疑う根拠にはなりません。
 毎年冬季にはインフルエンザが流行して高い熱に悩まされる人はたくさんいますが、もしも再びSARSの発生があった場合には、これらの急に発熱する疾患はすべてSARSに感染しているかどうか心配する原因に十分なり得ますので、インフルエンザのワクチン接種などをしておくとともに、体調の維持に心がけ、外出から帰ったらうがいと手洗いを励行するなどの、基本的な予防法を実行することが重要です。
 インフルエンザワクチンは個人防御のために行うもので、外国へ出張予定者も、インフルエンザウイルスに感染した際に発症や重症化を防ぐためには、インフルエンザワクチンの接種は効果があります(Q1参照)。特に今冬は、WHOをはじめ世界各国が医療従事者へのインフルエンザワクチンの接種を推奨しているように、SARSの再発生があった場合に、SARSと混同される可能性のあるすべての発熱性疾患にかかる人の数を出来るだけ減らし、混乱を回避しようという意図から取られている対策です。したがってWHOの分類で、よりSARSの再発生の危険性が高いところに分類されている国に行く場合には、「混乱を避ける」意味でもインフルエンザワクチンの接種を受けておくことに意義があると考えられます。
 また、このような自分を守るための心配りとともに、咳などの症状があれば、周囲の人に感染させないように、咳(せき)をするときにはハンカチやティッシュなどで口元を覆うとか、あるいはマスクをするなどの気配りで、周囲の人たちも感染から守るという姿勢が非常に重要です。特に、医療機関を受診する際には、必ずマスクを着用してください。
 旅行などの際には、渡航先国や、訪問先と目的など、状況ごとに判断をする必要がありますので、常に最新の情報を入手するようにしてください。

国立感染症研究所のホームページに、WHOの勧告が掲載されています。
参考: 「今冬のSARS」:http://idsc.nih.go.jp/others/sars/index.html
「2003-04シーズンのインフルエンザ予防接種:SARSへの配慮を含めた提言」